福岡県レッドデータブック

文字サイズ
画像:文字サイズ小
画像:文字サイズ中
画像:文字サイズ大
検索

各分類群の概論

概要

蘚苔類は陸上植物の仲間ではあるが,維管束を持たず胞子体が配偶体に寄生的に着生していることが大きく異なる。蘚苔類は蘚類(マゴケ植物門),苔類(ゼニゴケ植物門),ツノゴケ類(ツノゴケ植物門)の3つのグループ(門)からなる。植物体の高さが1cm未満の微小な種が多いため目立たないが,日本には約1,800種の蘚苔類が分布している。福岡県の蘚苔類相については,1960年代~1970年代前半に尼川大録,長田武正,梅津幸雄,桑原幸信氏らの報告がある。特に,尼川・長田氏らの「野河内渓谷のコケ植物図説」のシリーズは,野河内渓谷に生育する全ての蘚苔類種について,形態的な詳しい記載と図による解説があり,蘚苔類に興味のある初心者にとっても貴重な文献となっている。

選定基準

蘚苔類の選定は,環境省「レッドリスト作成の手引」に準じている。

生育環境

蘚苔類は日陰の湿った場所に生育するように思われているが,私たちの身の回りを探すと,歩道の隅,庭石の上,街路樹の樹幹上に多くの種が生育しているのが見つかる。蘚苔類の中には,高温や乾燥に対する耐性を持った種も多い。ただし,レッドデータブックに掲載されるような希少種は,石灰岩の露頭,急峻な山頂部,湿原など特殊な地形や地質に限って生育することが多い。山頂域が石灰岩地となっている古処山には多くの好石灰岩性の蘚苔類が生育しており,2010年に日本蘚苔類学会によって「日本の貴重なコケの森」として認定されている。

保全対策

蘚苔類は根を持たず,生活に必要な水や養分は植物体の表面から吸収する。また,他の維管束植物を押しのけて成長することもできない。したがって,その生育は周囲の環境に影響される。蘚苔類を保全するためには,その蘚苔類が生育する生態系全体の保全を考えなければならない。

参考文献(引用文献)

  • 尼川大録,1966.沖の島産コケ植物検索表.生物福岡 6: 10-18.
  • 尼川大録,1971.福岡県のコケ植物相.教育福岡 254: 18-19.
  • 尼川大録,1971.北部九州コケ植物チェックリスト(予報).生物福岡 11: 45-53.
  • 尼川大録,1975.福岡県植物目録コケ植物門.福岡県高等学校生物研究部会(編),福岡県植物誌: 248-263.博洋社.
  • 尼川大録・長田武正,1959.彦山植物目録II 蘚苔植物: 1-24.九州大学附属彦山生物研究所.
  • 尼川大録・長田武正,1961.野河内渓谷のコケ植物図説 (I).生物福岡 1: 12-30.
  • 尼川大録・長田武正,1963.野河内渓谷のコケ植物図説 (III).生物福岡 3: 22-38.
  • 尼川大録・長田武正,1964.野河内渓谷のコケ植物図説 (IV).生物福岡 4: 32-44.
  • 尼川大録・長田武正,1965.野河内渓谷のコケ植物図説 (V).生物福岡 5: 6-20.
  • 尼川大録・長田武正,1965.沖の島生物総合調査報告 IV 沖の島のコケ植物.生物福岡 5: 25-27.
  • 尼川大録・長田武正,1966.野河内渓谷のコケ植物.生物福岡 6: 1-9.
  • 桑原幸信,1961.北九州の苔類(予報).生物福岡 1: 31-32.
  • 梅津幸雄,1973.平尾台石灰岩地のコケ植物フロラ.北九州市文化財調査報告書第13集 カルスト台地平尾台の植生とフロラ: 47-51.北九州市教育委員会.
  • 梅津幸雄,1973.平尾台石灰岩地のコケ植生について.北九州市文化財調査報告書第13集 カルスト台地平尾台の植生とフロラ: 111-114.北九州市教育委員会.

図表

Copyright © Fukuoka Prefecture All right reserved.