福岡県レッドデータブック

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各分類群の概論

概要

「甲殻類等」のレッドデータブックの作成にあたり,まず,福岡県内に生息する,あるいは生息の可能性がある水生の甲殻類および無脊椎動物(昆虫類,貝類,クモ形類などを除く)のリスト(1次リスト)を作成した。2014年以降の行政・地方自治体が実施した生物調査のデータ,筆者らが独自に集積した調査データおよび文献などのデータを整理した結果,甲殻類が250種,その他無脊椎動物が208種リストされた。さらに,県内に生息する可能性がある希少種の見逃しを減らすため,福岡県および近隣県のレッドリスト・レッドデータブック(福岡県,2001,2014;佐賀県,2004;長崎県,2011,2022;大分県,2011,2022;熊本県,2019;山口県,2019)に掲載されている希少種を整理した。結果として,福岡県および近隣県では128種の希少種が抽出され,このうち38種が上述したリストに含まれていなかった。よって,これらをまとめると計496種が1次リストに挙げられた。ただし,これらすべての種について標本を確認できたわけではないため,誤同定が含まれている可能性がある。加えて,多くの調査は河川や沿岸の浅海域であり,海域の生物種の多くは本リストから抜け落ちている点も留意しなければならない。

1次リストに含まれる496種には,評価対象外の種(例えば,外来種や継続観察例がない種)についてもリストされている。ここから国外外来種10種を含む評価対象外の種を除外したうえで,生息状況の変化,および絶滅の危険性について評価を行なった。特に,福岡県および近隣県における128種の希少種を重点的に評価した。それ以外の種についても,後述する「選定基準」に沿って,調査結果をもとに,生息地の消失や個体数が減少した可能性がある場合は,適宜評価を行った。

2001年度版の福岡県レッドデータブックでは,絶滅危惧が6種,準絶滅危惧が14種,情報不足が2種,絶滅のおそれのある地域個体群が1種,計23種が掲載された。続く2014年版の福岡県レッドデータブックでは,絶滅危惧IA類が5種,絶滅危惧IB類が7種,絶滅危惧II類が5種,準絶滅危惧が18種,情報不足が10種,計45種が掲載された。今回(2024年版)の福岡県レッドデータブックでは,絶滅危惧IA類が5種,絶滅危惧IB類が8種,絶滅危惧II類が11種,準絶滅危惧が26種,情報不足が23種,計73種が掲載された。2014年版と比べて,29種が新規で掲載された。

掲載種が増加した理由としては,今まで評価できていなかった種の情報が蓄積されたことが挙げられる。これは特に,県内外の調査研究や環境アセスメントによって様々な生物の分布情報が蓄積されことに由来する。2014年版と同様に,今回の掲載種の多くは沿岸域,特に河川感潮域に形成される干潟や塩性湿地などを生息場(ハビタット)とする。このような潮間帯のハビタットは,河川開発や海岸開発に伴う河道掘削,浚渫およびコンクリート護岸化などによって劣化・消失が著しく,依然として回復の兆しはみられない。そのため,カテゴリーのランクが下がった種はいずれも新産地が発見されただけであり,環境改善に起因するものではないことを強調しておきたい。

先述したとおり,生物の分布情報は着実に蓄積されているが,新規で掲載された種の多くは情報不足のカテゴリーとして判断された。つまり,依然として生息状況が詳細に評価できていない種が多く存在する。例えば,県外では希少種であるが,福岡県では1例しか確認できていない種(シナガワウロコムシ,サナダユムシ,ユメユムシ,サヌキメボソシャコ,ユメユムシテッポウエビおよびフタハピンノなど)は今回評価を見送った。また,海域に生息する種については情報が限られており,多くの種の評価を見送った。例えば,県内の海草藻場や海藻藻場は気候変動やウニによる食害などによる衰退が示唆されており,本環境を生息場とする種も同様に減少している可能性があるものの,具体的な評価はできていない。結果として,県内における潜在的な希少種は現在の掲載種よりも多いと考えられるため,県内におけるさらなる調査が望まれる。

掲載種の和名や学名など分類学的な表記については,前述した福岡県および近隣県のレッドリスト・レッドデータブックおよび環境省がとりまとめるレッドリスト(環境省,2017,2020),日本ベントス学会(編)(2012),WoRMS(2023)を主に参照し,適宜,新規で出版された学術論文なども参照した。なお,本分科会で扱ったグループのうち,従来,星口動物門,ユムシ動物門,環形動物門として独立に扱われていた分類群については,近年の分子系統学的な研究から一つの大きなグループとして整理できることが明らかとなった。また,環形動物門の各綱(多毛綱,貧毛綱,ヒル綱)の系統関係も従来の分類体系と一致しないことが明らかになった。そのため,目以上の分類階級については,現在その多くが決定していない状況にある(小林,2021)。したがって,本来であれば目の階級は空白扱いとするのが妥当であるが,レッドデータブックが一般向けの普及啓発も目的としたものであることから,ここでは便宜的に「類」として,従来の分類階級をイメージできる枠組みを「目」の欄に表記して整理した。あわせて目の階級が提唱されていない腸鰓綱(ギボシムシ)についても同様に表記した。そのほか,和名が提唱されていない科名については学名で表記した。

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