福岡県レッドデータブック

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各分類群の概論

概要

福岡県産両生類のレッドデータブック掲載種選定にあたり,爬虫類・両生類分科会では県内で継続的な繁殖記録のあるもののうち,明らかに近代定着したとされる外来生物を除いた全種を評価対象とした。県内に分布する両生類に関連して,特に有尾目の小型サンショウウオ類は近年のDNA解析を中心とした研究により種分類が再編成されている最中にある(例えばMatsui et al., 2019; Tominaga et al., 2019; Sugawara et al., 2022)。一方で,小型サンショウウオ類については過去にも,種が細分されたのちに,より詳細なDNA解析により統合されたり,再度分割された例がある(例えばNambu, 1991; Matsui et al., 2002)。また,近縁種では外部形態で識別することが事実上不可能に近い場合があるなど,本稿執筆時点では県内に生息する確実な種数を把握することが困難である。今回の改訂においては,2023年12月15日版の日本爬虫両棲類学会の日本産爬虫両生類標準和名リストに掲載されているものを現時点で有効な名義種であるとみなしたうえで,必要に応じて標本のDNA解析による種同定も行うなどし,可能な限り実態に即した種分類に基づく評価を試みた。小型サンショウウオの種分類は今後もしばらく変遷が続くものと予想されるが,上記リストに基づけば,県内に分布する在来両生類は有尾目6種,無尾目10種の合計16種である(福岡県両生類目録。無尾目の外来種ウシガエルを除く)。日本全体に生息する在来両生類は有尾目56種,無尾目48種であるため,福岡県には日本産有尾目の10.7%,無尾目の20.8%が分布していることになる。

今回選定した両生類は絶滅危惧IA類1種,絶滅危惧IB類1種,絶滅危惧II類5種,準絶滅危惧5種の合計12種で(新旧対照表を参照),全体としては1種増加しているが,これは前回改訂以降に独立種として記載されたチクシブチサンショウウオが新たに選定されたためである。前回から今回までの間の種の生息状況の変化が評価された結果,いくつかの種ではカテゴリーが変更されている。カテゴリーが下方修正された種もあるが,これは個体群が回復したことを意味するわけではなく,前回評価時やそれ以前に縮小した個体群が小さい規模のままではありながらも,今のところ安定しつつあると評価されたためである。県内に生息する在来種のうち75%が何らかの形で選定されていることとなり,絶滅危惧種のみに限っても43.8%に当たることから,前回評価時と同様に県内の両生類は全般的に減少傾向にあると言わざるを得ない。

最も絶滅危険性の高い絶滅危惧IA類のオオサンショウウオは,かつては県内各所で記録されており,少なくとも一部の水系では繁殖もしていたと考えられるが,複数回の現地調査および環境DNA調査のいずれにおいても現存を確認することができなかった。本種は前回の改訂にかかる調査でも野生個体を確認することができていないため,県内からはすでに絶滅してしまった可能性があるが,一方で陰性的な生態を持っていることと長寿であることを考慮すると,僅かに生き残っている可能性も拭いきれない。そのため今回は前回と同じカテゴリーのまま掲載するが,確実に野生個体であると考えられる個体の記録は1990年代が最後であり(倉本,2002),仮に次回の改訂時にも発見できなかった場合は,県内では野生絶滅したと判定すべきかもしれない。

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