福岡県レッドデータブック

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各分類群の概論

保全対策

道路や宅地などの開発において,その場所に生息する両生類へのネガティブな影響はどうしても避けがたい。また,水田などの所有者の高齢化や後継者不足などにより,耕作放棄地が今後も増え続けることは予想に難くない。そうした中で,人間活動のために必要な土地開発や農地転換と両生類各種の存続にかかる保全対策との可能な範囲での両立が望まれる。特に在来両生類の多くは,水域面積や水深がそれほど大きくない環境を好むという点で,大多数の魚類や鳥類とはハビタットの選好性が異なる。またそのような環境は,人間にとってあまり有効な活用法がなく,土地開発の対象になりやすいように感じられる。国有地やOECM(Other Effective area based Conservation Measures,その他の効果的な地域をベースとする手段)などを活用し,複数の両生類相やその他生物群をエリア単位で包括的に保全するような取り組みが有効であると考えられる。

一方で,開発などによる環境改変とは別に,新興の外来種や感染症による在来両生類への悪影響も懸念される。外来のラナウイルスやカエルツボカビ・イモリツボカビによる感染症は,いまのところ野生の在来両生類への影響は限定的なようであるが,日和見的に感染が拡大する懸念は依然としてあるため注視する必要がある。また,県内で広域に定着している北米原産の外来種アライグマについては,国内外で在来両生類に大きな悪影響を与える事例が報告されており,アライグマ自体の防除促進や両生類の繁殖個体,卵がアライグマに食害されにくいようにするための工夫などを実践することが望まれる。また,近年ではインターネットオークションなどを介して,無視し難い規模の野生両生類のペットトレード拡大が懸念されている。こうした問題は必ずしも県内だけで有効な対策ができるとは限らないが,まずは普及啓発によって県民にもこうした問題に関心を持ってもらい,飼育生物の野外への放出をしないこと,感染症や外来種被害の早期発見,防除への理解,過度の採集への自制などを呼びかけ続けることが重要であると考えられる。

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