福岡県レッドデータブック

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種の解説

概要

今回の福岡県産魚類の希少種選定では,前回の福岡県RDB2001では取り扱わなかった海産魚類も対象とした。そのため,最初に福岡県での採捕記録がある全種を文献記録に基づいてリスト化し,福岡県産魚類目録を策定した。その結果,700種を越える目録となったため,生活史のどこかで河川を必要とする魚種,陸水の影響を受ける浅海・内湾域に主要な生息地を持つ魚種,水産有用資源でその増減が漁獲統計などで判断可能な魚種,北方系種で福岡県が分布の南限に近い魚種を対象としてスクリーニングを行い,1.5次リストとして約450種を選定した。一方,国土交通省の河川水辺の国勢調査,福岡県で過去に行われた環境アセスメント調査,学術論文で公表済みの魚類調査,分科会委員等が過去に行った未発表の調査から,魚類相データを抽出し,3次メッシュスケールで整理,データベース化した。そして,その約1100の魚類相データベースと,1.5次リストにあがった魚種を照らし合わせて,レッドデータブック記載種82種を選定した。これらのランクは,淡水魚類,汽水魚類,一部の海産魚類について,魚類相データベースに基づき,近年,分布が確認されているメッシュ数から判定された。また,水産有用資源として漁獲統計資料がある数種については,その増減に基づいて判断された。なお,海産魚類のいくつかの種の記載については,外部の専門家(西田高志博士)に執筆・協力していただいたことをここに付記したい。

今回の選定では,絶滅1種,野生絶滅1種,絶滅危惧IA類11種,絶滅危惧IB類12種,絶滅危惧II類12種,準絶滅危惧28種が挙げられた。また,文献資料でその個体数の減少が危惧される一方,漁獲統計資料内で複数種が混在するため,その判断が困難な魚種,さらには県内の分布域は狭い一方,学術知見に乏しくかつての分布域が不明瞭な魚種などは情報不足種としてリストに挙げた。今回の新規掲載種は約40種で,その多くは前回では評価されなかった海産魚類であったが,それ以外のコイ科,ハゼ科魚類は近年,分布調査が広域的に行われ,その分布の局所性あるいは狭小化が明らかになった魚種である。また,ニッポンバラタナゴやアリアケギバチはその生息地の改変以外に,国外・国内外来魚との交雑や競争の可能性が近年の研究で明らかとなり(日本魚類学会自然保護委員会,2013),リスクが増大した魚種である。スジシマドジョウ類については,最近の研究で新たに記載された種・亜種を含め(Nakajima, 2012),少なくとも筑前,筑後,遠賀,豊前の4地域にそれぞれ別種・亜種が生息し,特に,福岡都市圏の河川に生息するハカタスジシマドジョウが最も危機的な状況にあると判断された。アカザ,カジカ大卵型は前回の評価に比べてランクが下がっているが,生息地改変等の危機が和らいだためではなく,近年の広域的な分布調査によって新規産地が見つかった結果であることを付記しておく。

環境省版レッドリストで絶滅危惧種に指定される種のうち,福岡県内で生息が確認されるワタカ,ゲンゴロウブナ,ハスは国内外来魚であるため,対象から除外した。また,カマキリについては古い文献の中で筑後川での記録が挙げられているが,それ以降の記録が全くないこと,現在の自然分布域が九州では宮崎県の太平洋に流入する河川に限定されていることから,記録の信ぴょう性を疑問視し,除外種とした。絶滅のおそれのある地域個体群に挙げられる有明海のスズキについては,県内に限ってみたとき,分布域が安定し,個体数も多いため,ランク外とした。また,前回,情報不足として挙げられていたガンテンイシヨウジについては,分布情報が充実し,安定した産地があることを確認できたため,ランク外とした。

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