福岡県レッドデータブック

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各分類群の概論

概要

植物に関しては,福岡県レッドデータブック2011(以下「RDB2011」という。)に引き続き福岡県レッドデータブック2024(以下「RDB2024」という。)においても維管束植物(種子植物およびシダ植物)のほか,環境省RDBで対象としている蘚苔類,藻類,地衣類,菌類についても選定対象とした。地衣類,菌類については分類学的には植物とはいえず,最近では藻類も植物とは異なる系統群とみなされているが,これらの高次分類群についてもRDB2011を踏襲して植物分科会第二グループにおいて取り扱うこととした。

福岡県の維管束植物相については,福岡縣植物目録(中島,1952),福岡県植物誌(福岡県高等学校生物研究会,1975),福岡植物研究会による福岡県植物目録第1巻(筒井,1988)および第2巻(福岡県植物研究会,1993)が出版されたが,それ以降福岡県の植物相の全容に関する新たな出版物は刊行されていない。福岡植物研究会による福岡県植物目録は,標本に基づく詳細な分布状況が記録されており,シダ植物,裸子植物および被子植物の一部については希少性の評価も含め,福岡県内の各種の分布生育状況が判断できる。しかしながら,被子植物の多くの種については,そもそも福岡県にどの程度分布していたものかという情報が十分でない。この状況は福岡県レッドデータブック2001(以下「RDB2001」という。)刊行時の二十数年前からほとんど変化していない。

このような状況を踏まえ,今回の改訂では,分科会委員および多数の調査協力者による現地調査を積極的に実施した。調査に際しては,個体数,生育範囲,減少の程度などの定量的条件を含む調査データを調査票および調査集計表に取りまとめ,カテゴリーを評価するうえでの基礎資料とした。

特に維管束植物については,現地調査に当たって以下の重点調査種および重点調査地域を設定し,効率的・効果的調査に努めた。

  • (1)重点調査種
    • 追加掲載候補種:RDB2011以降,新たに福岡県新産として報告されたツチトリモチ,ツユクサシュスラン,コケイランモドキ,オオゲジゲジシダ,ニセヨゴレイタチシダなどを中心に約70種を選定。
    • RDB2011掲載種における重点種:RDB2011で絶滅危惧IA類かつRDB2001で情報不足の種(68種),RDB2011で情報不足の種(21種)を選定。
  • (2)重点調査地域
    • 山地ブナクラス域:英彦山地,釈迦岳山地,脊振山地。
    • 湿地:京築地域のため池群(環境省重要湿地:野依新池および靡松池など豊前地域のため池群を含む),古賀市~福津市にかけてのため池群(環境省重要湿地:福津市および古賀市のため池群)。
    • 二次草原:平尾台,福智山地稜線部の草原,夜須高原。
    • 石灰岩地・蛇紋岩地:塔ヶ峯・竜ヶ鼻を含む平尾台,香春岳,古処山,篠栗町金出~宮若市菅嶽にかけての蛇紋岩地。

蘚苔類,藻類,地衣類,菌類については,維管束植物と比べても研究者が少なく,情報の蓄積も少ない。蘚苔類,藻類,地衣類については前掲の福岡県植物誌(1975)に目録が掲載されている。また,地衣類では,英彦山およびその周辺地域の地衣類(柏谷ほか,1998,原著は英文)に大分県と福岡県にまたがる地域の地衣類リストが掲載されている。一方,菌類については,熊本のきのこ(熊本きのこ会,1992)に福岡県内で撮影された写真が一部掲載されているが,まとまった情報はほとんど得られていない。

したがって,これらの高次分類群についても,今回の改訂において,現地調査を積極的に実施した。調査に際しては,RDB2011掲載種の再確認を行うとともに,環境省RL掲載種のうち福岡県内に分布すると考えられるもの,福岡県内で特に重要と考えられる種を選定して重点的に調査を行った。

今回のRDB改訂において各カテゴリーに選定した種数(亜種,変種を含む。以下同様)を高次分類群ごとに表 植物等-1に示す。改訂の結果,維管束植物は653種が掲載され,RDB2011に比べて47種増加した。また,蘚苔類15種,藻類17種,地衣類8種,菌類24種が掲載された。RDB2011に比べて蘚苔類については増減なし,藻類,地衣類,菌類については,それぞれ,3,1,18種増加した。植物全体としてはRDB2011の掲載種645種から69種増加し,RDB2024では714種の掲載となった。

植物分科会で対象とする分類群については,多様なグループが含まれることから,以下,維管束植物に関する概要について述べる。蘚苔類,藻類,地衣類,菌類については,それぞれ各論として後述する。

維管束植物のRDB2011からの変化状況を新旧対照表として表 植物等-2(種子植物)および表 植物等-3(シダ植物)に示す。維管束植物は掲載種数が多いため,RDB2024では種子植物とシダ植物に区分し,上位カテゴリー順に掲載した。種子植物の科名および科の配列順は,RDB2011を踏襲して新エングラー体系に従ったが,最新の分類体系であるAPG体系で科名が変更された場合は,本冊子巻末に掲載した「福岡県レッドリスト2024」の備考欄にAPG体系による科名を付記した。また,種子植物の和名,学名は原則としてGreenList 2016を使用した。シダ植物の科名および科の配列順,和名,学名は,FernGreenList ver. 2.0を採用した。

今回の改訂で選定された維管束植物は,絶滅:42種,野生絶滅:1種,絶滅危惧IA類:240種,絶滅危惧IB類:184種,絶滅危惧II類:111種,準絶滅危惧:51種,情報不足:24種,合計653種であった。維管束植物の評価結果について要約すると,以下のとおりである。

  • (1)RDB2011掲載種の合計は606種であり,今回の改訂では47種の増加となった。今回,カテゴリー外として評価した種が30種あるため,新規掲載種は77種であった。新規掲載種のうち,絶滅危惧IA類に評価されたものは,マツナ,ヒロハノカワラサイコ,ミヤマガンピ,キリシマヒゴタイ,オナモミ,コバノヒルムシロ,ウエマツソウ,キバナノアマナ,ホソバノアマナ,ホザキマスクサ,ロッカクイ,キンセイラン,シロテンマ,ハルザキヤツシロラン,ハクウンラン,ムカゴサイシン,ムカデラン,ミズチドリ,コオロギラン,ヒメシケチシダ,アミシダ,クマイワヘゴ,ニセヨゴレイタチシダ,ホソバヤブソテツ,ヒロハヒメウラボシの25種であった。なお,新規掲載種のうちのシオンについては,RDB2001で情報不足として掲載,RDB2011では逸出由来としてカテゴリー外とされたが,野生株であることから今回再び情報不足として掲載した。
  • (2)RDB2011で絶滅または野生絶滅として評価された種のうち,ヒメシロアサザ,スブタ,ハマムギ,ヒメバイカモ,オニカモジ,タキミシダ,イヌイワデンダ,ミヤジマシダの8種については,2011年以降に現存が確認されたため,今回の改訂では絶滅危惧種として掲載した(オニカモジが絶滅危惧II類のほかは,いずれも絶滅危惧IA類に評価)。一方,RDB2011で絶滅危惧IA類として評価されたコウライブシ,ヒメツルアズキ,ヒメノボタン,カワラハハコ,イヌイ,ドロイ,ギボウシラン,ムカゴトンボ,イイヌマムカゴ,イシガキウラボシ,オオクボシダ,および情報不足として評価されたウンランの計12種については,過去50年間以上現存情報がなく,今回の調査でも確認されなかったため,いずれも絶滅として評価した。
  • (3)上位のカテゴリーに移行(絶滅危惧IB類・絶滅危惧II類から絶滅危惧IA類,絶滅危惧II類・準絶滅危惧から絶滅危惧IB類,準絶滅危惧から絶滅危惧II類に変更)した種は合計38種あった。カテゴリー上昇種には,チョウセンスイラン,スジヌマハリイ,コウホネ,モウセンゴケ,ムラサキミミカキグサなどの湿生・水生植物が多く,そのほか,ツクシタンポポ,キンバイザサ,ヒメヒゴタイなどの草原性植物,シチメンソウ,イソホウキギなどの海岸・河口域の植物も該当した。
  • (4)下位のカテゴリーに移行(絶滅危惧IA類から絶滅危惧IB類・絶滅危惧II類・準絶滅危惧,絶滅危惧IB類から絶滅危惧II類・準絶滅危惧,絶滅危惧II類から準絶滅危惧に変更)した種は合計110種あった。カテゴリー低下種の多くは,現状確認調査に基づく生育地点・個体数などに関するデータが充実し,環境省レッドリスト作成の手引(2020,2023)に基づく定量的なカテゴリー評価が行われた結果を反映したものである。これらのなかには,ヒロハテンナンショウ,ヤマシャクヤク,ツクシガシワ,ツクシマムシグサなどのシカ忌避植物も含まれていた。
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