福岡県の自然(1)
(1)地形と地質 福岡県は九州の北東端に位置し,北は玄界灘,響灘,東は周防灘,南西は有明海に面している。西の佐賀県とは東西に伸びた脊振山地および筑後川で境され,南東の大分県とは英彦山地,南の熊本県とは釈迦岳山地で境される(図3-1)。県北では英彦山地に源を発する遠賀川が筑豊盆地,直方平野,遠賀平野を形成しながら響灘へ注ぐ。周防灘に面した県東部には今川など中小河川しかないが,遠浅の海岸に沿って比較的規模の大きな豊前平野が発達している。県南では大分県の九重連山に源を発する筑後川が釈迦岳山地から西へ伸びた耳納山地の北を西進し,釈迦岳山地から流れ出した矢部川との間に県内第一の豊穰な穀倉地帯である筑後平野を形成しながら有明海へ注いでいる。県北西部では博多湾へ開口する室見川,御笠川,那珂川などにより福岡平野が,糸島半島基部には唐津湾に開口した雷山川,博多湾に開口した瑞梅寺川により糸島平野が形成されている。 県内の主だった山地には,上述の佐賀県との境をなす脊振山地(脊振山1055 ),大分県との境をなす英彦山地(英彦山1200 ,犬ヶ岳1131 ),熊本県との境をなす釈迦岳山地(釈迦岳1230 )・筑肥山地のほか,英彦山地から西へ伸びる古処山地(古処山860 ),更に北西へ続き,筑豊盆地と福岡平野に挟まれた三郡山地(三郡山936 ),および豊前平野と筑豊盆地・直方平野に挟まれた福智山地(福智山901 )がある。 地質構造から見ると,福岡県は中部地方から紀伊半島,四国を経て九州へ至る中央構造線の北側に位置し,西南日本内帯に属する。北九州の企救半島・平尾台,田川,飯塚付近には非変成ないしは弱変成のチャート,粘板岩,砂岩,石灰岩などが分布し,古生代後期の石炭紀から二畳紀の岩石であると考えられている。糸島郡,能古島,香椎・篠栗・八木山,田川,筑後地域には結晶片岩,角閃岩などからなる三郡変成岩が分布するが,これらは上述の古生代の堆積岩が広域変成作用を受けたため形成されたものである。非変成古生層,三郡変成岩類は一般に山地を形成しており,筑肥山地,耳納山地,古処山地など筑紫山地南部は主としてこれらの地層や岩石で形成されている(図3-2)。 中生代前期(三畳紀・ジュラ紀)の岩石は福岡県からは発見されておらず,中生代後期(白亜紀)の堆積岩,火成岩が知られるだけである。関門層群(白亜紀中・後期)および八幡層(白亜紀後期)は小倉,八幡,若松地域に分布し,関門層群下部の脇野亜層群は汽水あるいは淡水生の魚類,貝類,カイムシ類化石を多産する。関門層群上部の下関亜層群および八幡層は安山岩,流紋岩,凝灰岩,凝灰角礫岩を大量に含むことから,九州北部は白亜紀後期には中性ないし酸性マグマによる火山活動が活発であったと考えられている(福岡県1988)。白亜紀後期には地下深部での酸性マグマの活動が活発化して,福岡県全域で花崗岩・花崗閃緑岩が非変成古生層,変成岩類,白亜系などに貫入した。地下深部で形成された花崗岩類は,その後の地殻変動で地表近くまで持ち上げられ,侵食作用によって地表に露出した。脊振山地,三郡山地南部は主として花崗岩類で形成されている。 新生代古第三紀には北九州,筑豊,福岡,大牟田地域で地殻の沈降がおこり,海産貝類や植物化石,石炭を含む地層が厚く堆積した。古第三系は大牟田市周辺,芦屋から筑豊へかけての丘陵地,宗像郡,福岡市東部および周囲に点在する丘陵地などに見られる。 新生代新第三紀から第四紀にかけては安山岩,流紋岩を主とする火山活動があり,英彦山山地,釈迦岳山地を形成した。また,鮮新世から更新世にかけて現在の玄界灘沿岸地域では玄武岩熔岩を噴出する火山活動があり,姫島,芥屋,可也山,今山,能古島,玄界島,小呂島,津屋崎,相島,黒崎などでは玄武岩が見られる。かつては大規模に玄武岩熔岩台地を形成していたと思われるが,現在は不連続に玄武岩流の名残を残す芥屋などでは,火道の小山が見られる。 |
図3-1 福岡県のおもな山と川 (クリックすると見れます)
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第四紀更新世初期から中期には火山噴出物からなる耶馬渓層,輝石安山岩からなる筑紫熔岩などが形成された。更新世段丘堆積物は高位段丘面構成層,中位段丘面構成層,低位段丘面構成層に区分される。高位段丘面は筑後平野周辺でよく認められる。中位段丘面はしばしば上下2面に分けられ,中位段丘下位面構成層の多くはその上部に約8万年前の阿蘇4火砕流堆積物を含んでいる。最終氷期に形成された低位段丘面は筑後平野周辺でよく発達している。 (松隈明彦・冷川昌彦) |
図3_2 福岡県の地質略図(福岡県植物誌,1975)
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(参考文献) 福岡県,1988.福岡県土地分類基本調査総括報告書.154pp 国土庁土地局,1987.縮尺15万分の1土地保全図および付属資料(福岡県).166pp |
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