発刊にあたって
地球には,目に見えない細菌からゾウのような大きな動物まで,3000万種類もの生物がいるといわれています。私たちは,これらの多様な生物のつながりの中で,その恩恵を受けながら豊かな生活や文化を育んできました。
福岡県は,豊前海,筑前海,有明海の3つの海に面し,英彦山や脊振山などの山々,遠賀川や筑後川,矢部川などの河川,その流域に開けた平野など,豊かな自然に恵まれています。私たちは,この自然環境とその中で生きる多様な生物,そしてこれらから受けている恵みを次の世代に確実に引き継いでいかなければなりません。
一方で,開発による土地利用の変化や外来種の侵入,気候変動などにより,生物多様性はさまざまな危険にさらされています。このため,本県では「福岡県生物多様性戦略」や「福岡県ワンヘルス推進行動計画」を策定し,生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた取り組みを推進しています。
また,人と野生生物とが共生する豊かな自然環境を次代に継承することを目的とした「福岡県希少野生動植物種の保護に関する条例」を令和3年5月に施行しました。本条例に基づき,絶滅のおそれのある野生生物のうち,特に保護の必要性が高いものを対象に,個体の繁殖促進,生息・育成環境の維持・整備などの保護回復事業を実施するとともに,その保護に対する県民の皆さまの意識醸成を図っているところです。
「レッドデータブック」は,絶滅のおそれのある野生生物をリストアップし,その現状や減少要因などを明らかにしたものです。今回発刊する「福岡県の希少野生生物-福岡県レッドデータブック2024-」は,2011年刊行の植物群落,植物,哺乳類および鳥類,2014年刊行の爬虫類,両生類,魚類,昆虫類,貝類,甲殻類その他およびクモ形類等を改訂,統合しています。
改訂作業においては,福岡県希少野生生物保護検討会議および同分科会の委員の皆さまをはじめ,多くの方に多大なご尽力を賜りました。心よりお礼申し上げます。
本書が,県民の皆さまの希少野生生物への理解を深めていただくきっかけとなり,保護活動や環境への配慮のための資料として広く活用していただければ幸いです。