福岡県レッドデータブック

文字サイズ
画像:文字サイズ小
画像:文字サイズ中
画像:文字サイズ大
検索

各分類群の概論

生育環境と保全対策

海藻と淡水藻が生育する環境を汽水域,潮間帯,潮下帯,淡水流水域,湖沼・ため池・水田の5つに類別し,それぞれについて生育環境と保全対策を述べる。

  • (1) 汽水域(アヤギヌ,アサクサノリ)

    アヤギヌは河川感潮域の礫石やコンクリート護岸にも着生するが,主たる着生基質はヨシの茎である。今回アヤギヌを確認できた瑞梅寺川や雷山川の汽水域にはヨシ群落が発達しており,それらの保全が重要となる。一方,県内でアサクサノリが確認された豊前海側の3河川の河口には広い感潮域が形成されており,小石,木の枝,コンクリート製の護岸堰,他の海藻など様々なものが着生基質となっている。埋立てなどの開発により干潟や河口域の環境が大きく変化すると生育地の劣化につながる。生育環境の維持が重要である。他県ではヨシの茎への着生が見られているが,本県ではまだ確認されていない。

  • (2) 潮間帯(イチマツノリ)

    県内では能古島の限られた箇所でのみ確認されている。コンクリート製の土台,もしくはそこに着生するカキ殻が着生基質となっており,この生育場を恒久的に維持できるかどうかが鍵となる。

  • (3) 潮下帯(トサカノリ,スギモク,ヨゴレコナハダ,ホソエガサ)

    県内では,いずれの種も天然の岩礁海岸で生育する。特にスギモクは底質が砂礫,ホソエガサはアマモやウミヒルモの群落周辺の砂泥域に堆積する貝殻が散在する場所が必要である。個体数が激減した理由は不明だが,埋立てを伴う沿岸工事などによる着生基質の喪失,土砂流入などで透明度の低下やシルトの堆積による生理障害が発生することが要因と考えられる。

  • (4) 淡水流水域(スイゼンジノリ,オオイシソウ,オキチモズク,チスジノリ,カワノリ,イズミイシノカワ,タンスイベニマダラ)

    水の清澄な湧水域や貧栄養な上中流域,湧水地に近い平野部の小川や農業用水路など,種により生育環境は様々である。生育地の消滅や生育面積の縮小をもたらす要因としては,護岸工事,水路変更,圃場整備,湧水量の低下,農地や畜舎からの栄養塩類の流出により水質汚濁,汚濁に強い水草や珪藻類,あるいは河畔林の被覆による低照度化が環境劣化につながる場合がある一方で,逆に半日陰を好む種の場合は,樹木の伐採により強光環境になることが個体群の消滅につながることもありうる。

  • (5) 湖沼・ため池・水田

    これらの止水環境は,主に車軸藻類が生育する場であるが,特にため池は環境劣化の激しい生育環境であることを環境省レッドリストに掲載されている藻類の約3分の1を占めていることが物語っている。日本全国のため池や水田約240地点を調査した国立環境研究所の事業では,山間部で現在もまだ利用されているため池で多くの種が確認されるも,富栄養化が進んで透明度が著しく低下しがちな平地のため池では,車軸藻類が生育できない場合が多かったようである。県内の農業用ため池データベースによると,2024年3月31日時点で4,746点(ただし,1つの池で複数点がカウントされている場合がある)の登録がある。車軸藻類の減少要因としては,富栄養化による水質悪化,藻体への浮泥の堆積,光量低下が挙げられる。農家戸数の減少や土地利用の変化から農業用ため池の管理体制の維持が課題だと言われているが,定期的な水底の泥さらいや堰堤の草刈りといった管理の徹底が車軸藻類の多様性維持には不可欠である。

Copyright © Fukuoka Prefecture All right reserved.