福岡県レッドデータブック

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種の解説

昆虫相の研究状況

昆虫類はその種数において全動物のほぼ2/3に相当すると言われるほど,著しく繁栄している動物群である。種数の多さだけに限らず,その生態の多様性は形態の多様性と相まって,極地や沿岸以外の海中・海底を除くあらゆる自然環境(寄生による動植物体を含め)に適応している。そのために昆虫類の多様性の解明とその保全は極めて多岐にわたる膨大な事業となる。福岡県が位置する九州北部は低地に照葉樹林が発達した暖温帯である。本県はこのような低地ないし低山地の暖温帯林から脊振山地や英彦山地のようにその上部がブナやミズナラなどが卓越する冷温帯林まで多様な森林で構成されるとともに,長い距離にわたる沿岸部や沖ノ島のような島嶼を含んでいる。このような本県の多様な自然環境にはそれぞれに森林や草原に適応した昆虫群をはじめ,河川,池塘,沿岸部などに適応した水生,半水生昆虫など多様な昆虫群集が存在し,また南九州からの亜熱帯性の昆虫類の進出もみられる。本県の昆虫相は九州大学農学部昆虫学教室の創設以来ここを中心とした九州大学の各研究機関による解明が続けられ,さらに過去には久留米市にあった梅野昆虫研究所,九州大学の彦山生物学研究所,現在では北九州市立自然史・歴史博物館などの昆虫学研究機関を中心とした研究,筑紫昆虫同好会,北九州昆虫趣味の会,久留米昆蟲研究會(旧久留米昆虫同好会),博多昆虫同好会などの同好会活動,ならびにこれらの会とも関連した多くの職業的,非職業的昆虫研究者による研究活動などによって,比較的まとまった研究がなされてきた。この中で,トンボ(蜻蛉)目,バッタ(直翅)目,カメムシ(半翅)目の大型種,コウチュウ(鞘翅)目,ハチ(膜翅)目の大型種,チョウ(鱗翅)目などの大型で顕著な昆虫類についてはかなりの資料の蓄積が行われてきた。しかし,その他の昆虫群,特にカメムシ目の同翅亜目,寄生性のハチ目,ハエ(双翅)目の大部分などについては,他県と同様に本県でも昆虫相の解明が著しく遅れている。そのためにトンボ目,コウチュウ目,いわゆるミクロレピを除くチョウ目などでは本県に生息する種数の概要が判明しているが,全昆虫類の総種数となると,その算定は行われておらず,また,研究の遅れている昆虫群については今後著しく多くの種が記録されるであろうことは想像に難くない。

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