リアルタイム生物季節
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一昨日の11月8日から二十四節気の立冬(りっとう)に入り、暦の上では冬になりました。朝晩がグッと冷え込むようになり、平野部でも紅葉が着々と進んできましたね。
冬の使者である冬鳥たちも、続々と福岡に訪れはじめています。身近な場所では、ジョウビタキの「ヒッ、ヒッ」という澄んだ鳴き声がよく聞こえるようになってきました。県内のとある湿地では、10月下旬頃にヒシクイというカモの仲間が飛来しました。気温の低下とともに、虫やカエルなどの生きもの達は姿を隠してひっそりしていますが、冬鳥たちの福岡生活はこれからが本番を迎えます。
【2023年11月10日】
秋も深まり、実りの季節になりましたね。先日、マダニ対策としてズボンの裾を靴下の中に入れていたところ、靴下にたくさんの種子がくっついていました。自然界の植物も秋に種子が成熟するものが多く、付着散布する種子もこの時期によく見られます。
今回靴下にくっついていたのは、
左上:ダイコンソウ、左下:アレチヌスビトハギ、中上:キンミズヒキ、中下:ヒメキンミズヒキ、右上:ササクサ、右下:チヂミザサ の計6種!
チヂミザサは粘液でくっつくタイプ、他の5種は細かいトゲやフック状の構造でくっつくタイプでした。人間が植物の移動に役立っていることがよくわかる出来事でした。
ちなみに、生きもの雑学コーナーでも種子散布の解説がありますのでぜひ読んでみてください!
https://biodiversity.pref.fukuoka.lg.jp/futsushu/zatsugakustory/seed.html
【2023年10月17日】
明日9月8日から二十四節気の白露(はくろ)に入ります。
白露とは、夜の空気が冷えて夜露で濡れた草木が、朝の光で白く見えはじめるころ、という意味です。県内の平野部で夜露が生じるのはまだ先になりそうですが、暑さのピーク時に比べると夜間の気温が下がってきて、夜が過ごしやすくなってきたように感じます。
生きものの世界でも着々と秋が訪れています。
秋の味覚の代表格、クリが山で旬を迎えています。コオロギやマツムシなどの秋の虫の声もたくさん聞こえるようになってきました。そろそろヒガンバナも咲き始めることでしょう。
【2023年9月7日】
8月8日、保健環境研究所の構内で今シーズン初のツクツクボウシの鳴き声を確認しました。写真の小さい方がツクツクボウシ、大きい方がアブラゼミです。まだまだ暑さ厳しい日が続きますが、ツクツクボウシの声を聞くと、なんとなく秋の気配を感じます。
当研究所では、気候変動と生物季節の関係性を調べるため、国立環境研究所などと一緒に計27種の動植物の季節性を観測しています。
【2023年8月10日】
今日から夏土用に入りました。
土用とは、立春・立夏・立秋・立冬の前18日間のことをさしますが、圧倒的に知名度が高いのは夏土用でしょう。夏土用の頃は、暑さが本格的になり体調を崩しやすい時期です。そのため、江戸時代に夏土用の丑の日に滋養強壮の高いものとしてウナギが食べられるようになったと言われています。
ウナギは、かつてはどこにでもたくさんいる普通の魚でしたが、今では国および県のレッドデータブックで絶滅危惧IB類に選定されるほど数が減ってしまいました。生物多様性の劣化によって、食の多様性や文化が保てなくなるのは非常に悲しいことです。生物多様性保全のために自分でできること、はじめてみませんか。
【2023年7月20日】
6月28日、福岡県保健環境研究所の構内で、今シーズン初のニイニイゼミの鳴き声を確認しました。太宰府周辺では25日頃から鳴き始めているようで、場所によってはヒグラシも鳴き始めています。ちなみに、過去2年間の研究所構内におけるニイニイゼミの初鳴きは、2021年は6月24日、2022年は6月22日でした。
これからしばらく梅雨空が続くようですが、セミたちの大合唱の季節は着実に近づいています。
【2023年6月29日】
夏至に入り、日が長くなりましたね。これから暑さが日に日に増していきますので、熱中症には気をつけてお過ごしください。
さて、明日6月27日からは七十二候の「菖蒲華(あやめはなさく)」に入ります。平尾台では、アヤメ科のノハナショウブが見ごろを迎えています。ノハナショウブは園芸種であるハナショウブの原種で、山野の湿原でみられますが、県内では湿原の減少や園芸採集などによって生育地が減少しており、絶滅危惧IB類に選定されています。
アヤメ科の花は、雨に濡れるとその濃い紫色がより一層鮮やかに見えます。梅雨時期に咲くアジサイと並んで、日本の梅雨らしい情景の1つと言えるのではないでしょうか。
【2023年6月26日】
福岡県保健環境研究所の構内で3種類の野イチゴが真っ赤な実をつけています。クサイチゴは酸味が少なくしっかりとした甘みがあって、爽やかな風味のイチゴです。ナワシロイチゴは酸味が強いので、生食よりもジャムなどに加工するのがオススメです。ヘビイチゴは味が薄くてあまりおいしくありません。ちなみに、ヘビイチゴは名前のイメージから毒があると思われがちですが、毒のある野イチゴ類はありませんので安心してください。
どの野イチゴも庭や草地などの身近な場所で見られますので、見つけたら味わってみてはいかがでしょうか。ただし、犬の散歩コースになっている場所では、色々と気を付けてくださいね。
【2023年5月26日】
カラっと晴れた春の日、空き地や道端、畔道などの草むらで耳を澄ますと、「パチッ、パチッ」という音が聞こえてきます。実はこれ、ヤハズエンドウ(別名:カラスノエンドウ)というマメ科植物の果実がはじける音なんです。ヤハズエンドウの果実は、熟すと黒くて細長いサヤエンドウのような形になります(写真中の矢印)。熟した果実は、乾燥するとサヤが2つに割れてねじれ、その勢いで中のマメ(種子)を飛ばします。身近なところにもよく生えていますので、忙しい足を少し止めて、静かに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
なお、身近な生きもの図鑑にもヤハズエンドウの解説があるのでぜひ見てくださいね。
【2023年5月1日】
4月に入ってから、福岡県保健環境研究所の前の農地から「ケリリリリリッ」というけたたましい鳥の声がよく聞こえてきます。正体はケリという鳥。田畑や休耕地、空き地などの地面で繁殖します。繁殖期間中に人や犬猫、カラスなどが巣やヒナに近づくと、とても大きな声で威嚇してきます。なんと、車にも威嚇するほど気が強いそうです。ここ数十年で北部九州で繁殖するようになってきたため、知る人ぞ知る鳥ですが、知る人にとっては非常に目立つ、春の風物詩です。
明後日4月20日からは二十四節気の穀雨に入ります。天気予報もちょうど雨。作物にとって恵みの雨となることでしょう。
【2023年4月18日】
新しい年度を迎え、新生活を始められる方も多くいらっしゃることと思います。今年度も四季折々の自然を紹介していきますので、皆さんの生活にちょっとした彩りを添えられれば幸いです。
さて、暦では、明日4月5日から二十四節気の清明(せいめい:すべてのものが清らかで生き生きする頃)、七十二候の玄鳥至(つばめきたる)に入ります。若葉が芽吹き、花が咲き、鳥が歌い、チョウが舞う、そんな生命の賑わいが感じられる季節となりました。春を告げるツバメ、もう皆さんのまわりにも到来しましたか?
【2023年4月4日】