リアルタイム生物季節2023

 ようやく春らしい暖かな陽気になってきましたね。冬を耐え忍んでいた様々な生きものたちが、活動をはじめています。右の写真はここ数日で身近な場所で見られた生きものです。左上から時計回りに、オオイヌノフグリ、シロバナタンポポ、ナガバモミジイチゴ、ヌマガエル、ハンミョウ、ホトケノザ。普段の生活の中でも、少し自然に目を向けてみるだけで、多様な季節の変化を感じることができます。

 来年度以降も引き続き、定期的に福岡の四季をお伝えしていきますので、よろしくお願いいたします。

【2024年3月29日】

サクラ

 昨日3月25日から、七十二候の「桜始開(さくらはじめてひらく)」に入りました。

 これとほぼ同じくして、福岡県保健環境研究所では、サクラ(ソメイヨシノ)の開花がはじまりました。右の写真の木は今日2輪の花を咲かせましたが、2022年は同じ木の開花が3月17日で、今年は9日遅い開花となりました。

 長年、生物季節観測を行っている福岡管区気象台では、サクラの開花日(標本木に5~6輪の花が咲いた日)の平年日は3月22日だそうですが、今年はまだ開花の発表がありません。県内では全体的に、開花が例年よりも遅くなっているようです。

 皆さんの地域はいかがでしょうか?

【2024年3月26日】

ヒバリ

 明日2月29日から七十二候の「草木萌動(そうもくめばえいずる)」に入ります。太陽の光がやわらかくそそぎはじめる今日この頃、草木の芽生えが少しずつ顔を見せ始め、冬の寒さを耐えていた生命の息吹が感じられるようになってきました。

 糸島市内の水田地帯では、春を告げるヒバリの鳴き声が盛んに聞こえていました。あと半月ほどで、ツバメも飛来してくることでしょう。

【2024年2月28日】

スミレと菜の花

 昨日2月4日から二十四節気の立春に入りました。

 イベントとしては、前日2月3日の節分の方が生活に身近なことでしょう。本来「節分」とは、季節の変わり目である春分、立夏、秋分、立冬の前日のことを指しますが、今では一年の節目にあたる春の節分に重きが置かれるようになっています。季節の変わり目には悪鬼(邪気)が来ると考えられており、「魔滅」の音に似た豆をまくようになったという説があります。みなさんは豆まき、しましたか?

 さて、寒い日はあともう少し続きそうですが、平野部ではウメやロウバイの花が最盛期をむかえ、菜の花やスミレの仲間も続々と咲きはじめています。少しずつ近づく春の気配、みなさんも目を向けて感じてみてはいかがでしょうか。

【2024年2月5日】

ウメ

 日没時間が徐々に遅くなり、少しずつ日が長くなってきたと感じる今日この頃。平野部ではウメの花が咲き始めています。

 福岡管区気象台では1月11日にウメの開花が確認されており、平年より20日も早い開花だったそうです。ウメは品種によって開花時期が異なります。保健環境研究所構内では、今日時点で白色の花が20輪ほど咲いており、筑紫野市内の某所では紅色の花が三分咲きになっています。

 皆さんのまわりはいかがでしょうか。

【2024年1月19日】

ジャノヒゲ

 新年あけましておめでとうございます。

 今年は辰年ということで、新年最初の記事は辰(竜・龍)にちなんだ冬の生きものを紹介します。 

 ジャノヒゲ(別名リュウノヒゲ)は森林内や林縁などに生育する常緑の多年草で、古くから庭の植え込みとしてよく利用されてきました。また、肥大した根を乾燥させたものは、麦門冬(ばくもんどう)という生薬になります。晩秋から初春にかけて鮮やかな青紫色に熟す実(植物学的には果実ではなく種子です)は、「龍の玉」と呼ばれ冬の季語になっています。

【2024年1月5日】

紅葉としおり

 今日12月7日から二十四節気の大雪(たいせつ)、本格的に雪が降りだす頃に入ります。いよいよ寒さが厳しくなる時期ではありますが、今週はじめ頃からまた暖かさが戻っていますね。県内の平野部で雪が降るのはいつになるのでしょうか。

 さて、保健環境研究所に生育している樹木が美しく紅葉しています。せっかくなので、押し葉にしてしおり作りの材料にしてみました。左からイロハモミジ、ドウダンツツジ、イチョウです。同じ種類でも、日の当たり具合などによって色が違ってくるのが面白いですね。

 季節の彩りを、このような作品にして残してみてはいかがでしょうか。

【2023年12月7日】

 一昨日の11月8日から二十四節気の立冬(りっとう)に入り、暦の上では冬になりました。朝晩がグッと冷え込むようになり、平野部でも紅葉が着々と進んできましたね。

 冬の使者である冬鳥たちも、続々と福岡に訪れはじめています。身近な場所では、ジョウビタキの「ヒッ、ヒッ」という澄んだ鳴き声がよく聞こえるようになってきました。県内のとある湿地では、10月下旬頃にヒシクイというカモの仲間が飛来しました。気温の低下とともに、虫やカエルなどの生きもの達は姿を隠してひっそりしていますが、冬鳥たちの福岡生活はこれからが本番を迎えます。

【2023年11月10日】

付着散布

 秋も深まり、実りの季節になりましたね。先日、マダニ対策としてズボンの裾を靴下の中に入れていたところ、靴下にたくさんの種子がくっついていました。自然界の植物も秋に種子が成熟するものが多く、付着散布する種子もこの時期によく見られます。

 今回靴下にくっついていたのは、
左上:ダイコンソウ、左下:アレチヌスビトハギ、中上:キンミズヒキ、中下:ヒメキンミズヒキ、右上:ササクサ、右下:チヂミザサ の計6種!
チヂミザサは粘液でくっつくタイプ、他の5種は細かいトゲやフック状の構造でくっつくタイプでした。人間が植物の移動に役立っていることがよくわかる出来事でした。

 ちなみに、生きもの雑学コーナーでも種子散布の解説がありますのでぜひ読んでみてください!
https://biodiversity.pref.fukuoka.lg.jp/futsushu/zatsugakustory/seed.html

【2023年10月17日】

クリ

 明日9月8日から二十四節気の白露(はくろ)に入ります。白露とは、夜の空気が冷えて夜露で濡れた草木が、朝の光で白く見えはじめるころ、という意味です。県内の平野部で夜露が生じるのはまだ先になりそうですが、暑さのピーク時に比べると夜間の気温が下がってきて、夜が過ごしやすくなってきたように感じます。

 生きものの世界でも着々と秋が訪れています。
 秋の味覚の代表格、クリが山で旬を迎えています。コオロギやマツムシなどの秋の虫の声もたくさん聞こえるようになってきました。そろそろヒガンバナも咲き始めることでしょう。

【2023年9月7日】

ツクツクボウシとアブラゼミ

 8月8日、保健環境研究所の構内で今シーズン初のツクツクボウシの鳴き声を確認しました。写真の小さい方がツクツクボウシ、大きい方がアブラゼミです。まだまだ暑さ厳しい日が続きますが、ツクツクボウシの声を聞くと、なんとなく秋の気配を感じます。

 当研究所では、気候変動と生物季節の関係性を調べるため、国立環境研究所などと一緒に計27種の動植物の季節性を観測しています。

【2023年8月10日】

 今日から夏土用に入りました。
 土用とは、立春・立夏・立秋・立冬の前18日間のことをさしますが、圧倒的に知名度が高いのは夏土用でしょう。夏土用の頃は、暑さが本格的になり体調を崩しやすい時期です。そのため、江戸時代に夏土用の丑の日に滋養強壮の高いものとしてウナギが食べられるようになったと言われています。

 ウナギは、かつてはどこにでもたくさんいる普通の魚でしたが、今では国および県のレッドデータブックで絶滅危惧IB類に選定されるほど数が減ってしまいました。生物多様性の劣化によって、食の多様性や文化が保てなくなるのは非常に悲しいことです。生物多様性保全のために自分でできること、はじめてみませんか。

【2023年7月20日】

ニイニイゼミ

 6月28日、福岡県保健環境研究所の構内で、今シーズン初のニイニイゼミの鳴き声を確認しました。太宰府周辺では25日頃から鳴き始めているようで、場所によってはヒグラシも鳴き始めています。ちなみに、過去2年間の研究所構内におけるニイニイゼミの初鳴きは、2021年は6月24日、2022年は6月22日でした。

 これからしばらく梅雨空が続くようですが、セミたちの大合唱の季節は着実に近づいています。

【2023年6月29日】

ノハナショウブ

 夏至に入り、日が長くなりましたね。これから暑さが日に日に増していきますので、熱中症には気をつけてお過ごしください。

 さて、明日6月27日からは七十二候の「菖蒲華(あやめはなさく)」に入ります。平尾台では、アヤメ科のノハナショウブが見ごろを迎えています。ノハナショウブは園芸種であるハナショウブの原種で、山野の湿原でみられますが、県内では湿原の減少や園芸採集などによって生育地が減少しており、絶滅危惧IB類に選定されています。

 アヤメ科の花は、雨に濡れるとその濃い紫色がより一層鮮やかに見えます。梅雨時期に咲くアジサイと並んで、日本の梅雨らしい情景の1つと言えるのではないでしょうか。

【2023年6月26日】

野イチゴ類

 福岡県保健環境研究所の構内で3種類の野イチゴが真っ赤な実をつけています。クサイチゴは酸味が少なくしっかりとした甘みがあって、爽やかな風味のイチゴです。ナワシロイチゴは酸味が強いので、生食よりもジャムなどに加工するのがオススメです。ヘビイチゴは味が薄くてあまりおいしくありません。ちなみに、ヘビイチゴは名前のイメージから毒があると思われがちですが、毒のある野イチゴ類はありませんので安心してください。

 どの野イチゴも庭や草地などの身近な場所で見られますので、見つけたら味わってみてはいかがでしょうか。ただし、犬の散歩コースになっている場所では、色々と気を付けてくださいね。

【2023年5月26日】

カラスノエンドウ

 カラっと晴れた春の日、空き地や道端、畔道などの草むらで耳を澄ますと、「パチッ、パチッ」という音が聞こえてきます。実はこれ、ヤハズエンドウ(別名:カラスノエンドウ)というマメ科植物の果実がはじける音なんです。ヤハズエンドウの果実は、熟すと黒くて細長いサヤエンドウのような形になります(写真中の矢印)。熟した果実は、乾燥するとサヤが2つに割れてねじれ、その勢いで中のマメ(種子)を飛ばします。身近なところにもよく生えていますので、忙しい足を少し止めて、静かに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

 なお、身近な生きもの図鑑にもヤハズエンドウの解説があるのでぜひ見てくださいね。

【2023年5月1日】

ケリ

 4月に入ってから、福岡県保健環境研究所の前の農地から「ケリリリリリッ」というけたたましい鳥の声がよく聞こえてきます。正体はケリという鳥。田畑や休耕地、空き地などの地面で繁殖します。繁殖期間中に人や犬猫、カラスなどが巣やヒナに近づくと、とても大きな声で威嚇してきます。なんと、車にも威嚇するほど気が強いそうです。ここ数十年で北部九州で繁殖するようになってきたため、知る人ぞ知る鳥ですが、知る人にとっては非常に目立つ、春の風物詩です。

 明後日4月20日からは二十四節気の穀雨に入ります。天気予報もちょうど雨。作物にとって恵みの雨となることでしょう。

【2023年4月18日】

ツバメ

 新しい年度を迎え、新生活を始められる方も多くいらっしゃることと思います。今年度も四季折々の自然を紹介していきますので、皆さんの生活にちょっとした彩りを添えられれば幸いです。

 さて、暦では、明日4月5日から二十四節気の清明(せいめい:すべてのものが清らかで生き生きする頃)、七十二候の玄鳥至(つばめきたる)に入ります。若葉が芽吹き、花が咲き、鳥が歌い、チョウが舞う、そんな生命の賑わいが感じられる季節となりました。春を告げるツバメ、もう皆さんのまわりにも到来しましたか?

【2023年4月4日】