ブナ群落
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群落の特徴 | 本県のブナ群落は,ブナ-シラキ群集に分類され,標徴種および識別種にシラキ,コハウチワカエデ,タンナサワフタギ,コツクバネウツギなどを伴う。この群集は,クマイザサ亜群集,コバノミツバツツジ亜群集,典型亜群集に区分される。 クマイザサ亜群集は林床にクマイザサが生育しているもので,英彦山(標高1200 ),犬ヶ岳(1131 )の約1000 以上のやや平坦部に分布する。この地域が県内で積雪量が多いことに関係していると思われる。コバノミツバツツジ亜群集は林床にミヤコザサが生育する脊振山地(脊振山1055 ,雷山955 )と,ササ類が生育していない三郡山地(三郡山936 ,宝満山829 ),古処山地(古処山862 ,馬見山978 )に分けられる。ミヤコザサはスズタケより積雪量が少なく乾燥した環境に分布するもので,脊振山地が花崗岩質で透水性が高く,風の強い地域であることなどに関係していると思われる。典型亜群集は林床にスズタケが生育しており,釈迦岳山地(釈迦岳1230 ,御前岳1209 )の尾根筋北斜面と,英彦山および犬ヶ岳の800~1000 付近北斜面に分布する。 |
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群落構成 | 英彦山,犬ヶ岳のブナ-クマイザサ林は,ブナの樹高が20 前後,胸高直径は40~50cm,中には100cmに達するものもある。高木層はブナのほかコハウチワカエデ,クマシデなど,亜高木層にベニドウダン,ナツツバキ,シロモジ,タンナサワフタギ,マルバアオダモなど,低木層以下は密生するクマイザサの中にタンナサワフタギ,マルバアオダモ,リョウブ,オオカメノキ,ウスゲクロモジなどが点在している。脊振山地のブナ-ミヤコザサ林は,ブナの樹高15~20 ,胸高直径は20~30cmのものが多く,二次林的要素が強い。高木層はブナのほかコハウチワカエデ,イタヤカエデ,アカシデ,アカガシなどと混在し,亜高木層にコバノミツバツツジ,シラキ,コハウチワカエデ,ネジキ,低木層以下にミヤコザサのほかウスゲクロモジ,オオカメノキ,シロモジ,ツリバナ,コガクウツギ,ウンゼンカンアオイなどが見られる。古処山地および三郡山地のブナ林は広範囲な林分は見られず,ブナの樹高は20 前後,胸高直径30~50cmのものが多い。高木層はブナのほかにコハウチワカエデ,クマシデ,リョウブ,アカガシなど,亜高木層はシラキ,タンナサワフタギ,シロモジ,コバノミツバツツジ,シロダモ,ヤブツバキなど,低木層はアオキ,コガクウツギ,ツルシキミ,シロダモ,シキミなどが見られ,照葉樹林帯の構成種が多いのが特徴である。草本層は優占種は少ないが種数は多い。釈迦岳山地および英彦山・犬ヶ岳のブナ-スズタケ林は,ブナの樹高は15~25 ,胸高直径は40~50cmのものが多い。高木層はブナのほかミズナラ,リョウブ,コハウチワカエデ,イヌシデなどで,亜高木層はリョウブ,ミズナラ,コハウチワカエデ,シロモジ,コミネカエデなど,低木層以下はスズタケで占められ,わずかにシロモジ,ウスゲクロモジ,タンナサワフタギ,オオカメノキなどが点在する。釈迦岳山地はミズナラと混交する林分が多いが,英彦山のスズタケ域はミズナラの常在度が低く,モミ,シキミ,ハイノキの常在度が高い。 |
保存状況 | ブナの林分が一定の広がりをもつものとしては,英彦山,犬ヶ岳が最も優れている。釈迦・御前岳,脊振山は尾根筋にかろうじて残存し林分も小さい。ほかの分布域は更に個体数が少なく混合林的要素が濃い。英彦山・犬ヶ岳,釈迦・御前岳,脊振山の各山地のブナ林は,3亜群集を代表する指標として貴重である。しかし,それぞれの林床にはササ類が密生しブナの更新が困難である。また,1991年の台風被害によるブナの倒木は,半数以上に及んでいる。更に,林道や観光開発に伴う伐採などの人的要因も大きく,ブナ林の保護対策が望まれる。一部では植生の復元も試みられているものの,総合的ブナ林保護の対策が望まれる。 |
群落評価 | B(福岡県) |