雑木林
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群落の特徴 | 雑木林は,古くより生活利用のため,定期的に人手が加えられてきた林である。 群落形態は常緑樹二次林,常緑・落葉混交二次林,落葉樹二次林に大まかに区分され,薪炭,粗朶(そだ),木灰,用具など,利用の仕方により群落形態が異なる。いずれの林分も定期的な伐採により,萌芽性の強い樹種が選択的に残された。また,炭焼利用では,樹種の選別がなされている場合もある。 群落立地は集落近くの平野,丘陵部が多いが,山麓部や山間地では山中や稜線部まで広がっている。昭和20年代までは入会地として利用された林分も多く,10~20年周期で伐採が繰り返されてきた。多くが古くより1960年頃まで薪秣(しんまつ)地や榛莽(しんぼう)地,低木林であった。 |
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群落構成 | 常緑樹二次林(シイ・カシ萌芽林)はスダジイ,コジイ,アラカシ,タブノキ,ヤブニッケイ,ヤブツバキ,クロキ,クスノキなどの照葉樹が,高木層,亜高木層を形成し,樹高8~15 で,多くの個体は萌芽しながら成長している。林床は比較的暗く草本層はやや貧弱であるが種数は多い。常緑・落葉混交二次林はアカマツ,アラカシ,クロキ,クスノキ,シャシャンボ,ナナミノキなどの常緑樹と,コナラ,ハゼノキ,リョウブ,ネジキなどの落葉樹が混在して高木層,亜高木層を形成している。低木層は一般にヒサカキが優占し,ネズミモチ,ヒメユズリハ,シロダモ,タブノキ,スダジイなどの常緑樹や,サルトリイバラ,ミツバアケビ,ヤマフジなどのつる植物が多い。草本層は林分によりネザサ,コシダ,ウラジロなどが優占している。 これらの林は相観的にアカマツ林と,アカマツを欠く常緑・落葉混交二次林に分かれるが,後者にはアカマツ枯死後の残存林が多い。 アカマツは,かなり古くより窯業,製塩などの燃料に利用されていたことが考古学資料などで報告されている。例えば大野城市牛頸山周辺に点在する牛頸窯跡群では,6世紀から8世紀にかけて大量の須恵器が焼かれた。この燃料はアカマツであったと考えられている。この時代,すでに福岡平野南部の丘陵から低山地にかけては,かなりの範囲でアカマツを中心とした雑木林が広がっていたと推定される。このようなアカマツなどの薪炭利用は,沿岸部の製塩や,初期のたたら製鉄などでもなされたと推定されている。近代では筑豊平野を中心とする石炭産業で,坑木などに大量のアカマツが使用された。 落葉樹二次林は標高により群落形態が異なる。標高700 以上の山地帯では,夏緑樹林などの伐採跡にアカシデ-イヌシデ群落が見られる。三郡山地の林分では,高木層はアカシデ,リョウブ,コハウチワカエデを中心に,カナクギノキ,ヤマザクラで構成され,胸高直径10~25cm,樹高8~12 で密生している。亜高木層以下の各層の優占種はコバノミツバツツジ,コガクウツギ,ヤマツツジ,ツルシキミ,ウンゼンカンアオイなどである。また,脊振山地の稜線部では数カ所で萌芽したリョウブが優占する低木林が見られる。これらの林分は,主に炭焼きのため古くより維持されてきたもので,1970年頃までは県内の夏緑樹林帯の山地で稜線部まで伐採し,谷筋で炭を焼く風景が見られた。その後,これらの林分は利用されることなく放置され,現在,夏緑樹林二次林として成長を続けている。低山帯や山麓・丘陵部ではコナラ-ノグルミ林,コナラ-クヌギ林などが見られる。これらの群落は,高木層はコナラ,クヌギ,ノグルミ,カラスザンショウ,ホオノキ,ハゼノキなどの落葉樹が多く,林分によってはアカマツ,アラカシ,タブノキ,ヤマモモなどの常緑樹を混じえている。亜高木層以下ではクロキ,ヒサカキ,ネズミモチなどの常緑樹が多く,草本層では一般にコシダ,ウラジロ,ヤブコウジ,ヤマツツジなどが優占する。クヌギ,コナラは主に薪炭やシイタケのほだ木,ノグルミは下駄,経木,マッチの軸,漁網染色,ホオノキは下駄,版木,器具材などに利用された。 現在雑木林はほとんど利用されることなく成長を続けているが,近年,雑木林に依存する豊富な動植物群が見直され,種,遺伝子の保存の場として,また多様な動植物のハビタットとして重要であると認識されている。 |
群落評価 | C(福岡県) |