全国的にタナゴ類全体が減少している中で，県内でも各地の産地がなくなりつつある。本種の宝庫であった筑後川中流域では，古くからの土や石組みの水路がほとんど改修されてしまい，生息場所が極端に減ってしまった。県内のほかの地域でもほとんど同じような状態で，今後ますます減少傾向に拍車がかかる可能性が高い。

本種はイタセンパラと並んで日本最大のタナゴで，全長13cm程度まで成長する。雄の婚姻色は背側は青緑色，胸から腹にかけてと背鰭，臀鰭がピンク色に染まり，頭部は金属光沢に輝きたいへん美しい。細く始まる淡青色の体側の縦条は不鮮明である。側線は完全で，短い口ひげを持つ。

琵琶湖以西から広島県東部までと北部九州

朝鮮半島

繁殖の盛期は秋であるが，初夏に産卵を始める個体もいる。貝の中での成長は極めて遅く，稚魚が貝から泳ぎ出るのは翌年の5月以降である。泳ぎ出した稚魚は背鰭にはっきりした黒斑があり，止水域に集まっている。1年で5cm前後，2年で10cm前後になる。

成魚は水草の生えた流れのある所に好んで生息するが，産卵やその他の条件で広範囲に移動する。琵琶湖産のものと北部九州産のものとでは河川と湖沼という環境の違いから，生態や食性に差があるといわれる。自然状態では付着藻類をついばむ姿がよく見うけられる。