生物季節~生きものが告げる季節の変化~

 私たちは、花が咲く、紅葉する、冬眠からさめる、さえずりはじめる、など、身の回りの生きものの変化から季節の変化を感じます。このような生物それぞれが持つ季節的な活動の変化を生物季節(フェノロジー)といいます。
 生物季節は、日長や気温の変化が引き金となる場合が多いことから、近年では、地球温暖化による生物・生態系への影響を評価する手法の1つとして、注目されています。

生物季節観測

 生物季節の観測は、全国に設けられている気象台において、1953年から体系的に実施されており、大変貴重なデータとなっています。特に、サクラの開花日は、テレビ局や新聞社などが毎年こぞって気象台を訪れて報道する、馴染み深い生物季節です。このほかにも、例えば植物ではタンポポやアジサイ、ススキの開花、カエデの紅葉などが観測されており、動物ではウグイスやアブラゼミの初鳴、ツバメやホタル、モンシロチョウの初見などが観測されています。

福岡管区気象台における生物季節観測

 福岡県内には福岡市中央区大濠に福岡管区気象台があり、これまでに50種類の生物季節が観測されています。これまでのデータをグラフ化したのが下図です。
 サクラの開花日の平年値は、1953年からの20年間は3/29でしたが、2001年からの20年間では3/21と1週間近く早まっています。また、カエデの平年値は11/2から12/3と1か月近く遅くなっています。動物については、ツバメの初見の日は、1953年から大きな変化がみられていません。一方、アブラゼミの初鳴きは、1953年からの20年間の平年値が7/15だったのに対し、2001年からの20年間では7/3と10日近く早まっています。
 サクラの開花は「2月1日以降の最高気温の累積温度が600度を超えた日」と言われており、紅葉は1日の最低気温が8℃以下になると始まると言われています(詳細は「県内の動植物種について知りたい(身近な生きもの)> 生きもの雑学コーナー > 紅葉はなぜ起きる」を参照してください)。
 このように、生物の活動の一部は気温の変化と密接な関係がある場合があり、地球温暖化の影響が一部の生物季節にも表れはじめていると考えられます。生物季節が過去と比べて変化しているものもあれば、変化していないものもあることを考えると、餌生物との季節的なズレなどが生じる可能性があります。

福岡管区気象台における生物季節観測の結果(1953年~2020年)

図中の点線は近似直線を示す。
出典:生物季節観測の情報(気象庁)https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/index.html(2022/02/01アクセス)をもとに作成