暦と生物季節

 日々の生活の中で必要不可欠な暦(現代ではカレンダー)ですが、皆さんが使う暦の中には、年・月・日・曜日以外に、季節の変化を表す用語が隠れていることをご存知でしょうか。季節変化を表す用語として、生物季節がとても重要な要素の一つになっています。ここでは、日本に古来から伝わる暦の一部をご紹介します。

暦の歴史

 時の流れを、一日を単位として年・月・週などによって区切り、数えるようにした体系のことを暦といいます。
 日本では、飛鳥時代の604(推古12)年に最初の暦が作られたとされています。当時の暦は、朝鮮半島(百済)から伝わった太陰歴を参考に作られていました。太陰暦は月(太陰)の満ち欠けを基にした手法で、月が地球を回る周期が約29.5日なので、30日の月(大)と29日(小)の月を作って調節していました。一方、地球が太陽のまわりをまわる周期は約365.25日なので、季節はそれによって移り変わります。大小の月の繰り返しでは、しだいに暦と季節が合わなくなってくるため、2~3年に1度は閏月(うるうづき)を設けて13か月ある年を作り、季節と暦を調節しました。大小の月の並び方も毎年替わりました。
 明治時代以降は、太陽の動きを基にした太陽暦が用いられるようになり、現在は1年を12か月365日とする(閏年は366日)グレゴリオ暦が用いられています。

二十四節気(にじゅうしせっき)

 季節を表すために用いられてきた言葉で、今でも立春や夏至などはよく使われる言葉です。二十四節気は1年の太陽の黄道*上の動きを24等分して決められており、春夏秋冬の4つの季節をさらにそれぞれ6つにわける形(つまり約15日で一気)になっています。秋分や冬至など、今でもよく耳にしますし、カレンダーに記載されていることも多い暦です。
 二十四節気は中国の黄河中流域付近の気候を基準にして作られた暦です。そのため、日本の実際の気候とは少し感覚がずれる部分もあります。

七十二侯(しちじゅうにこう)

 二十四節気の各節気をさらに初侯、次侯、末侯に3等分したもの(つまり約5日間で一侯)で、季節に応じた動植物や天候の様子を短い言葉で表現し、季節の移ろいを子細に示した暦です。
 七十二侯は中国発祥の暦ですが、日本の季節に合わせて幾度も改定されており、現在では1878(明治11)の『懐中要便七十二候略暦』(国立国会図書館蔵)をベースにしたものがよく使われています。七十二候は日本の生物季節とより密接に結びついた暦で、美しい日本の四季の移ろいを細やかに伝える、美しい言葉が連なっています。例えば、春分の次候(3月25日~29日頃)は「桜始開(さくらはじめてひらく)」とされ、春に初めて桜の花が咲き始めるころと表現されています。また、立夏の初候(5月5日~5月9日頃)は「蛙始鳴(かえるはじめてなく)」とされ、野原や田んぼでカエルが鳴き始めるころと表現されています。 

 皆さんも、これらの暦を参考にしながら、身近な自然とその移ろいを感じてみませんか?

参考文献

  • 白井 明大,有賀 一広(2012)日本の七十二候を楽しむ-旧暦のある暮らし-.東邦出版.東京
  • 国立国会図書館.日本の暦.https://www.ndl.go.jp/koyomi/index.html
  • 新日本カレンダー株式会社.暦生活. https://www.543life.com/