水田-水路-ため池-畦畔の植生
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分類群 | 植物群落 |
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RDB2001カテゴリー | カテゴリーⅡ |
群落の特徴 | ほ場整備や除草剤などの影響を受けていない水田とその周囲には,昔ながらの水田雑草群落,水路やため池の水生植物群落,畦畔やため池堤防の草地群落などが,まとまりをもって見られることがある。このような水田耕作の影響を受けた「水田-水路-ため池-畦畔の植生」は,雑木林と同様に,人為的管理により維持されてきた植生である。 水田の群落:ここでいう水田の群落とは,一言でいえば,昔ながらの水田雑草群落である。この群落は,デンジソウ,シナミズニラ,ミズオオバコ,ヤナギスブタなど,現在,急激に減少しつつある水生植物を中心に構成されており,このような種構成からなる群落は,県内ではもはやほとんど見ることができない。現在の水田雑草群落の多くは,コナギ,ウリカワなどで構成される貧弱な群落である。しかし,放棄水田や水田に作られた養鯉池などでは,埋土種子などが残存しているため,これらの種子などが発芽し新たな群落を形成している場合もある。 水路の群落:水路の群落が成立する条件として,水路がコンクリートではなく土水路として維持管理されていることが重要である。低地から丘陵地にかけての土水路には,クロモ,エビモ,ヤナギモなど複数の水生植物により構成される群落が見られることがある。この群落自体の貴重性はあまり高くはないが,生物の生息空間として重要である。低地の土水路の大型のものとして位置づけられる二ッ川(三橋町)に成立するセキショウモ群落は,セキショウモのほか,エビモ,ヤナギモ,クロモ,ホザキノフサモ,ササバモ,オグラコウホネなどが出現し,県内では貴重な水生植物群落である。 一方,山間部の土水路には,渓流に生育するフジウロコゴケ,ホソバミズゼニゴケなどの蘚苔類やセキショウモなどが群生する場合があり,低地の水路と同様に生物の生息空間として重要である。 ため池の群落:水田と深いかかわりを持つため池は,天然の池沼と異なり,水抜きなどの人為的管理が行われており,富栄養化や陸地化が抑えられている。そのため,池中にはガガブタ,ジュンサイ,ヒルムシロ,ホソバミズヒキモなどにより構成される水生植物群落が見られる所がある。この植生を総称した「ため池水生植物群落」(別記)も,現在減少しつつある。極めて貴重なため池群落であるガシャモク群落も県内に存在している。ため池の岸辺にはヨシ,マコモ,ヒメガマなどの抽水植物が帯状に分布している所が見られ,この中には沈水・浮葉植物も混生している場合もある。 ため池湿地の群落:ため池には,堰の対岸側の水流入部などに小規模な湿地が形成されることがある。特に丘陵地から山間部にかけてのため池に見られる場合があり,面積は小さいが残された湿地として貴重である。このような湿地は,カンガレイやイグサなどが高密度で出現する場合,オオミズゴケやキセルアザミが高密度で出現し,サワギキョウ,ノハナショウブなどが混じる場合など,いくつかの異なる群落に区分される。このようなため池湿地群落は,「湿生植物群落」(別記)の一部に含まれている。 畦畔やため池堤防の群落:ほ場整備が行われていない山間部の畦畔,水田と隣接する林との間の斜面,ため池堤防斜面などには,草刈りなどの人為的管理によって成立している草地がある。この草地は,ススキが優占する場合が多く,時にチガヤが優占する場合もある。前者の場合は,ススキ-ネザサ群落として位置づけられ,ススキ,ネザサのほか,キキョウ,スズサイコ,カワラナデシコ,オミナエシ,リンドウなど,最近減少しつつある種を混生しており,面積は小さいが残された二次草原として貴重である。また,ススキやチガヤが生育していない湿った畦畔には,ミゾカクシ,ムラサキサギゴケなどが優占していることが多いが,ウメバチソウやモウセンゴケなど,減少しつつある種が混じる場合もある。 最近は山間部までほ場整備が進み,上述した群落は急激に減少している。しかし,部分的には残されている所があり,生物多様性を維持する観点から貴重な存在となっている。このような群落を含む水田生態系の保全のためには,それを維持してきた伝統的農業文化の継承も合わせた市民参加型保全活動などが考えられる。 |
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構成群落 | 水田雑草群落,水生植物群落,湿生植物群落,ススキ-ネザサ群落 |
群落立地 | 平野部および中山間地域の水田と,水田耕作に必要で,かつ昔ながらの伝統的な形態を残したため池,水路などの諸施設。 |
群落評価 | B(福岡県) |