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アカマツ群落

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RDB2001概説

画像:傾斜地にアカマツをはじめとする植物が密生している。アカマツ群落。

赤池町 熊谷信孝

分類群 植物群落
RDB2001カテゴリー カテゴリーⅠ
  • 画像:傾斜地にアカマツをはじめとする植物が密生している。アカマツ群落。
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群落の特徴

アカマツの優占する二次林は,丘陵地,尾根部,風衝地,基岩が露出した花崗岩・安山岩地帯などで,自然災害や人為的に破壊された土層の薄い立地に侵入してできたもので,一部では植栽されたものもある。かつては広く分布し,上木を炭鉱の杭木や建物の梁(はり),薪などとして切り出したり,低木の伐採,落葉のかき出しなど,人手を加えることで維持されてきた。しかし,1960年代のエネルギー革命以降,用材や薪としての利用は途絶え,落葉かきなども行われなくなり,遷移が進行した。同時に,マツノザイセンチュウによる枯損がまん延し,県内の優れたアカマツ群落はほとんど消滅し,人工林への転換や広葉樹林となる林分が続出した。わずかに残された群落も1991年の台風により倒伏・折損し,現在本県では絶滅寸前となっている。

群落構成

上野峡では上層を20前後のアカマツが占めるが,密度は低い。特に30年生以上になるとマツクイムシによる枯損個体が多く,大木は少なくなっている。亜高木層以下にスダジイ,アラカシ,コナラ,ヤマハゼ,ソヨゴ,ネジキ,ヤマツツジなどがあり,下層はウラジロやコシダに覆われ,部分的にはゲンカイツツジ群落が点在する。油山でもアカマツの密度は低く,下層はコナラ,アラカシ,ヤブニッケイ,コシアブラ,リョウブ,ネジキなどの樹木が多く,林床はウラジロやコシダなどに覆われる。

保存状況

本県のアカマツ群落はほとんど壊滅状態であり,20年前まで見られた英彦山,浮羽町分田,黒木町笠原などの,胸高直径100cm近くもあった群落はほぼ消滅した。上野峡では個体数は少ないが,かなり広い範囲が相観的にはアカマツ林の様相を呈している。しかし古木になって,スダジイやアラカシ,コナラ,ソヨゴなど常緑樹との競争に負けたり,マツクイムシによる枯損で広葉樹林化した林分も見られる。また近くを林道が通ったことで,林分の分断による衰退なども心配される。

油山では自然観察の森として管理が行き届くため,マツノザイセンチュウ防除薬剤を樹幹注入して,保護に努めている。古くより代表的な里山景観の一つであったアカマツ林は,何らかの対策を講じなければ,今後も消滅の一途をたどると思われる。

群落評価 C(福岡県)
補足情報

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