タキミシダ
学名:Antrophyum obovatum BakerMyしおりとは、あとでもう一度閲覧したい種の解説ページを保存し、いつでも見直すことができる機能です。このボタンを押すことで本解説ページをMyしおりページにブックマークし、Myしおりページへ移動します。
分類群 | 維管束植物 |
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科名 | シシラン科 Vittariaceae |
RDB2001カテゴリー | 絶滅 |
環境省カテゴリー | 絶滅危惧ⅠB類 |
生息状況・危機の状況・選定理由 | 福岡市早良区野河内渓谷,那珂川町猿山谷,篠栗町若杉山,若宮町犬鳴山の4カ所が,記録および標本産地である。1960年代に発見された犬鳴山の自生地では,その後の森林伐採で絶滅した。若杉山では1934年と1935年採集の標本が残っているのみで,再確認はされていない。野河内渓谷・猿山谷の標本は所在さえ不明である。全国的に個体数が少なく,採取される懸念が多い。 |
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分類・形態 | 渓流沿いの陰湿な岩面に着生する小形の常緑性のシダである。 |
分布情報 | MAP |
分布(県外) | 本州(千葉以西),四国,九州 |
分布(国内) | 中国,台湾,インドシナ半島,マレーシア |
生息環境 |
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執筆者 | (筒井) |
常緑性。根茎は短く,匍匐するか斜上,葉を叢生し,鱗片を密につける。鱗片は披針形から線形,基部が広く,尾状に伸びる先端に向けてしだいに狭くなり,長さ7mm,幅1mm以下,暗褐色,格子状となり,辺縁にやや密に歯牙状の突起がある。葉柄はふつう長さ8mm以下,特に大きい葉で10cmをこえることもあり,暗緑色から暗褐色,基部に鱗片がある。葉身は倒卵形,上から
くらいのところで幅が最大となり,先端は鈍形から鋭形,下方に向けてしだいに狭くなり,基部は狭いくさび形,大きな葉で長さ10cm,幅6cm前後(ただし長さ3cmで胞子嚢群をつけるものもある),辺縁は全縁であるが,膜ができ,革質,緑色,無毛,中肋ははっきりせず,葉脈は密に網目をつくる。胞子嚢群は浅い溝に埋まってつき,線形,脈に沿って網目をつくる。側糸は短くて棍棒状,分枝するものもあり,先端の細胞は倒卵状楕円体。染色体数はn=60の4倍体。本州(富山県・千葉県以西)・四国・九州で,やや陰湿な林中の渓流の近くの岩上などに生じ,台湾・中国から,インドシナ半島・マレーシアに広く分布するが,正確な分布域はよくわからない。 この種に含まれる範囲はどれだけが,さらに研究を要する。小さい葉でも充分胞子嚢群をつけ,そのような種によくあるように,葉の大きさや形は変異に富む。東南アジアでは林中の樹幹につくことが多く,分布北限付近では井戸の石垣のような人工的な場所で発見されることが多い。個体数が多くないのに,よく採集されるので,たいていの生育地で絶滅の危機に瀕している危急種である。和名は牧野富太郎が樽の滝(高知県須崎市)に観瀑に訪れた時,みつけたのでこの名をつけたという。